らんまる攻城戦記~兵どもが夢の跡~

「戦国の城」それは近世の城郭のような石垣も天守も無く、土塁と空堀というただの土で作られた戦場の砦。 戦国の世を駆け抜けた貴重な資料の宝庫です。

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虚空蔵山城(麻績古城 麻績村)  

◆麻績新城を凌ぐ要塞◆

麻績城(新城)を攻められた方の共通の感想は「苦労して登ったのに期待を裏切るプアな城跡だった・・・」

麻績城跡 (10)
疲れただけの麻績新城(尾根にある案内図)

小生もその一人であった(笑) 
※詳細は恥ずかしい初期の記事麻績城を参照

中腹には「虚空蔵山城」という古城があると知っていたが期待出来るはずも無く捨て置いた。

最近どうしても気になり、本日攻城の軍を起こす。(まあ、いつもの気まぐれ?)

見ると聞くとは大違い。信州の山城ベスト10に推薦したい感動ものの「要塞」だったのだ!(汗)

虚空蔵山城(麻績古城) (49)
法善寺の脇を通り、観月苑第二駐車場脇が大手道となる。

城跡は触手のように南に張り出した尾根の中心部にあり、岩石の露出した天然の岩山に守られている。

山頂にある麻績新城とは上の城と下の城のような関係であるが、麻績城の本城としてはこの城を指したものと思われる。

虚空蔵山城(麻績古城) (3)
尾根の稜線に現れる最初の堀切。上巾8mで東側の尾根を断ち切っている。

虚空蔵山城(麻績古城) (6)
斜面には数段の段郭が交差するように配置され、岩場を乗り越えた先に本郭がある。

村の史跡として険しい斜面には遊歩道があったようだが、訪れる人も途絶え朽ち果てた残骸が残る。

岩場の隙間を潜り抜けると石積みの虎口に遭遇する。

虚空蔵山城(麻績古城) (9)
まさに要塞の出入り口にふさわしい造り。

この地を治めていた服部氏は、居館の裏山であるこの虚空蔵山に詰めの城を築いていたが、風雲急を告げる戦国時代の争乱に備え、峰の上に逃げ込み用の新城を築いたという。

虚空蔵山城(麻績古城) (10)
本郭の周囲は石積みだったと思われるが、現在は崩落。度重なる戦で破却されたような印象も残る。

天文二十二年(1553)三月に武田晴信の侵攻により、苅谷原城、青柳城が落城するに及び、村上方に属していた服部氏は城を捨てて上杉方に落ち延びる。

降伏した青柳氏が筑北地方を領有し麻績城も青柳氏の支配下に入るが、上杉軍の侵攻により落城する。
武田方の反攻で夜襲され再び落城し上杉軍は撤退する。

「もう、ボロボロでしょ!」(笑)

虚空蔵山城(麻績古城) (14)
37×30の本郭。北側は2mの土塁。

武田氏が滅び織田信長が本能寺の変で斃れると、上杉景勝が筑北に侵攻し麻績城・青柳城は上杉の支配下となる。

小笠原貞慶は深志を回復すると会田氏を攻め滅ぼし青柳城を攻め落城させる。麻績城も青柳氏が領有する。

青柳氏は小笠原貞慶に従うも、天正十五年(1587)に上杉への内通を疑われて謀殺される。

この時、青柳城とその支城とともに麻績城は再び落城したという。

虚空蔵山城(麻績古城) (18)
主郭背後の凄まじい深さの大堀切。堀底から高さ15mは圧巻!!

34年間に幾度となく争乱に巻き込まれて落城を余儀なくされた麻績城。

これだけの要塞で落城するはずも無く、ほとんどが戦意喪失の自落だったのでしょう。

虚空蔵山城(麻績古城) (19)
お尻から溜息の出そうな比高12m

虚空蔵山城(麻績古城) (22)
堀切北側の二の郭。

虚空蔵山城(麻績古城) (27)
続く三の郭。背後を土塁で盛り上げて堀切に落とす手法だ。

三の郭の背後は感動の嵐だ!

堀底を二重にして、上巾20m×高さ21m。土木工事の金字塔かもしれない・・・(笑)

虚空蔵山城(麻績古城) (30)
堀底を盛土している。

虚空蔵山城(麻績古城) (38)
恐ろしい深さの堀切をお伝え出来ない写真で残念なのである。

筑北地方は戦略的にも重要な場所であった事は史実が物語る。

34年間に渡る過酷な戦争の舞台は、恐らくこの虚空蔵山城であり、この城が落ちれば麻績新城も自落せざるを得ないのであろう。

これほど技巧が施された要塞も、次々と繰り出される大軍の前には持たなかったと思われる。

虚空蔵山城(麻績古城) (46)
南側の稜線にある郭から麻績地方の北部を臨む。

久しぶりに完成度の高い山城を攻めた。戦国末期まで改修されたに違いない。

らんまる推薦の信州を代表する優れた砦である。

虚空蔵山城(麻績古城)img
宮坂武男氏による縄張図。

虚空蔵山城(麻績古城)(55)
矢倉城から見た麻績城塞群(ズーム7倍)

≪虚空蔵山城≫ (こくぞうさんじょう または麻績古城) 

標高:775.2m 比高110.0m(法善寺より)
築城年代:不明
築城・居住者:麻績氏、服部氏、青柳氏、小笠原氏
場所:東筑摩郡麻績村麻
攻城日:2011年12月11日 
見どころ:大堀切跡、曲輪、石積みなど
お勧め度:★★★★★(満点)
城跡までの所要時間:20分
注意:岩場は転落注意
参考文献:「図解山城探訪 第五集 松塩筑史料編 宮坂武男著」






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Posted on 2011/12/11 Sun. 22:38 [edit]

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コメント

ありがとうございます!

らんまる様

 麻績城は、天正壬午で争奪の続いた城ですから、興味があったのですが、しょぼいとの噂を聞いてパスしていました。
 しょぼいのは、新城(詰城)の方で、本体はバリバリだったんですね。雪解けを待って、攻めに行きたいと思います。
 貴重なレポート、有り難うございました。

武蔵の五遁 #- | URL | 2011/12/12 13:34 * edit *

Re: 武蔵の五遁さんへ

そう言って頂ける事が何よりも励みになります。こちらこそありがとうございます。

恐らく豊臣秀吉が上杉景勝に返還命令を出すまで、この地の要塞として使われ続けたのでしょう。
小ぶりながら星形の橋頭堡を思わせる縄張りには痺れますねぇ~(笑)

五遁様ならではのレポート、楽しみにしておりまするv-218

らんまる #- | URL | 2011/12/12 20:40 * edit *

下にもこんな

らんまる殿

以前、訪ねた新城もすばらしい遺構でしたが
下にある古城も凄い「要塞」なのですね 
とくに背後の大堀切は、信濃の山城らしい感じがします

今後もレポート楽しみにしております 

yama #mQop/nM. | URL | 2011/12/16 21:26 * edit *

Re: yamaさんへ

いつもご覧頂き恐縮でございます。

武田、上杉、小笠原の名だたる諸氏が抗争を繰り返した筑摩郡の麻績城が「ショボイ城」だったなんて思えなくて下の城を攻めてみました。

古城とは名ばかりのまさしく「戦国時代最終の現役の要塞」であり、戦略と戦術さえあれば数ヶ月は持ちこたえられる縄張りで、西洋の橋頭堡に類似する山城の集大成と思われます。

貴殿のブログの更新も期待しておりまするw

らんまる #- | URL | 2011/12/16 22:29 * edit *

ありがとうございました

らんまるさん、おはようございます。

昨日はお世話になりました。お陰で、行きたいと思っていた
上杉V.S.小笠原攻防の城を堪能できました。
ご案内いただいた城はみな想像以上の規模で、戦があった
緊張がひしひしと伝わってきました。

天気にも恵まれとても楽しい1日でした。
ありがとうございました。
また宜しくお願いします。

三浦@埼玉 #- | URL | 2012/06/24 08:29 * edit *

Re:三浦@埼玉様へ

三浦様、ご丁寧にありがとうございます。

今でこそ山間の長閑な田園地帯でございますが、麻績村と筑北周辺は信濃における戦国時代の要衝の地であったことをご堪能頂けたと思います。
拙いアテンドで配慮の足りぬ事もありましたでしょうが、信州育ちの武骨もの故お許しいただければ幸いです(笑)
また信州攻めを思いつかれましたらお声をお掛けくださいませ。

らんまる #- | URL | 2012/06/24 08:55 * edit *

らんまるさんに感謝

らんまる様。
今日は、初めて御挨拶を申し上げます。先祖の城跡を克明に投稿いただき有難うございます。冬の積雪の時は訪れて居ませんでした。清延より12代子孫です

服部清隆 #- | URL | 2012/09/20 12:45 * edit *

Re:服部清隆様へ

小生の拙いブログにコメント頂きありがとうございます。

麻績村そして筑北村は信濃における街道の要所だったこともあり、戦国時代に戦禍の絶える事の無い土地でございました。
貴殿の祖先である服部氏も青柳氏もまた、そのような争奪の繰り返される所領にあって難儀を耐えてこられたのだと思います。
勝者によって歴史は書き換えられるのが常でしたので、服部氏も滅亡したような書き方をされておりましたが、命脈を保っておられたとは感無量でございます。

ブログを始めて三年を経過しましたが、会田岩下氏の子孫の方や、生坂村の宇留賀氏(井高氏)の子孫の方、御代田町の尾台又六郎様の子孫の方からもありがたい励ましのお言葉を頂きました。
貴殿からの励ましのお言葉もありがい限りでございます。

城の縄張りばかりが中心の記事で、城主や城歴などがあまり書けずに心苦しく思っております。
まだまだ道半ばですが、これからも宜しくお願い致します。

らんまる #- | URL | 2012/09/20 20:28 * edit *
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