らんまる攻城戦記~兵どもが夢の跡~

「戦国の城」それは近世の城郭のような石垣も天守も無く、土塁と空堀というただの土で作られた戦場の砦。 戦国の世を駆け抜けた貴重な資料の宝庫です。

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飯田城 (南安曇郡白馬村神城飯田)  

◆三方堅固の鉄条網を備えた山城◆

場面を白馬村に戻そう・・(笑) 

そうは言っても、木曾地方の諸城攻略は来年の課題として残しておこうと思う。楽しみである。

白馬村にある飯田城は秀逸の縄張りを持つ城なのだが、Webでの記事が無い。明確な登城経路が無いという事であろうか?

「落ちぬなら、落としてみしょうホトトギス」 ビョーキ同迷軍に不可能はありえない事を立証したかった(汗)

飯田城攻略図①飯田城攻略図。(国土地理院1/25000参照)

この城の攻略方法は二つしかない。

犬川から月夜沢の大手筋を探して詰めるか、飯田城秋葉砦の尾根を登り縦走して北西の城域へ入るか二者択一である。

午前中に佐野城の攻防戦で疲労困憊してしまったキラネーム同迷軍は、当初の予定だった秋葉砦からの縦走を体力消耗の理由により諦め、西尾根の大手筋からの攻城で軍議を決する。しかしこの決定こそが悪夢の始まりだった。

飯田城(白馬村) (76)ベースキャンプから見た攻撃路。

城域北側を流れる犬川の対岸に車を捨て、犬川を渡河する。大手に通じる月夜沢を目指すが途中で藪が酷くなり道も消えてしまい、進軍停止となる。

「直登するしかないのか‥…」

傾斜角45度以上はある。午前中に攻めた佐野城への尾根よりも酷い斜面であった。

斜面の木立をロープ代わりにして時には根っこさえ掴みながら這いつくばる。滑り落ちたら止まる保証など無い。

飯田城(白馬村) (1)竪掘㋐の側面を登るていぴす殿。

山県さんもこのような無謀な城攻めなどしなかったであろう・・(笑)

飯田城(白馬村) (2)尾根が見えていても一進一退の繰り返しである。

楽勝で攻める予定がドツボにハマった蟻地獄である。「なんでそうなるの??・・(汗)」

飯田城見取図①
無謀な攻城ルートと見取図。

地形図だけ見れば北東の尾根伝いに登るというルートがありそうだが、犬川で刻まれた崖淵と雑木が立ち塞がり絶対に無理であった。

苦闘すること30分で堀切㋐へ到達。竪掘は横への動きを止めるというのをマジで体験出来たのは貴重だ(笑)

飯田城(白馬村) (3)上巾4mの堀切㋐


【A地区】

標高989mにある主郭1を中心に西尾根・北東尾根・南尾根を城域として展開している。
西尾根は岩場の断崖絶壁でありここからの侵入は不可能である。

飯田城(白馬村) (5)四段程度の段郭を備え、北は絶壁。

主郭は14×18の方形。藪だらけで虎口ははっきりしない。一段下を囲むように段郭が展開する。

飯田城(白馬村) (7)藪で荒れ放題の主郭。

飯田城(白馬村) (8)郭の東西に土塁が確認出来る


飯田城(白馬村) (9)西側の腰郭。横堀を入れている

南尾根は例の如く段郭を階段状に重ねる手法だが、斜面に横堀や竪掘を入れて寄せ手の動きを制御している。
冬は積雪が多い地域なので、雪の重みで木の枝が地面を這うように伸びている。(これが結構邪魔なのだ)

飯田城(白馬村) (12)主郭西側の土塁と切岸。木が横に生えているのがお分かりだろうか。

A地区におけるウィークポイントは北東の尾根になる。我々のように強引に北の斜面を登るヤツは考えられないので(笑)、北東尾根へ横移動して尾根伝いに攻めるというのがセオリーだろう。

飯田城(白馬村) (18)西尾根を強力に遮断する二重堀切

飯田城(白馬村) (19)上巾6m堀切㋑

飯田城(白馬村) (25)北側斜面に落ちる堀切㋒(上巾5m)

飯田城(白馬村) (27)南側へ竪掘として50m近く延びる

二重堀切から北東の尾根には土塁を壁にするような形で築いてして北斜面からの侵入を防御している。
尾根へは数段の細長い郭を置いているようだが、灌木と藪に阻まれて詳細が確認出来ない。

飯田城(白馬村) (32)北東尾根へ続く土塁

飯田城(白馬村) (33)北東尾根の郭。これ以上先には入れなかった

B地区へ繋がる東尾根を下る途中に、尾根を遮断する横堀㋓がある。

南側を土塁で迫り上げたこの横堀は、竪掘となって斜面を下る堀切㋑と㋒に合流していたフシがある。主郭への侵入に対する厳しい防御の一環であろう。

飯田城(白馬村) (36)横堀㋓

【B地区】

南東に位置する秋葉砦へ通じる尾根上にある。居住区と推定される南沢にあるC地区と本城のA地区を守るために増設されたと見るべきであろうか。
秋葉砦側の尾根には強力な防御ラインとして㋔㋕の二重堀切で遮断している。

飯田城(白馬村) (41)郭2(19×7)

残念な事にここに展開する段状の郭群は例によって灌木が密集していて侵入すら出来ない。辛うじて郭2が確認出来るくらいである(汗)

飯田城(白馬村) (44)山を越えた先が秋葉砦方面。


飯田城(白馬村) (48)補助線を引いても分かりづらい写真

飯田城(白馬村) (50)堀切㋔。通路としても利用したのか?


【C地区】

A地区とC地区に挟まれた南側の沢部分である。宮坂武男氏はここに居住区があったと推定されている。
月夜沢に通じるこの区間は城の大手筋であり、物資の補給はここから行われたと思われる。
日当たりは悪いが、城の最も重要な場所であり、戦時はここを指令所としてAとBに指示や伝令が為されたものであろう。

飯田城(白馬村) (55)かなり広い削平地

ここには大手口と断定する証拠としての虎口が確かに存在しているのだ。

飯田城(白馬村) (56)しっかりとした遺構が残る


飯田城(白馬村) (62)虎口を下りて突き当ると月夜沢。往時は運搬用の通路もあり水の手だったと思われる。


【城主・城歴】

飯田城は天文年間に仁科氏の家臣大日向佐渡守の居城だったと伝わる。
弘治二年(1556)、武田方の飯富昌景(山県昌景)の攻撃により落城。
この城を接収した昌景が一時的に白馬平定の前進基地として使ったようだが、廃城時期は不明。

飯田城(白馬村) (64)犬川より見た飯田城西尾根。


月夜沢から下ったものの、どうやってベースに戻るのか全く分からず試行錯誤で犬川を渡河する。

疲労困憊はピークで、何とか雑木林を抜けて出発地点に戻れた。大手筋からの攻城など無理であったと思う。

まさに「三方堅固の城」であった。これだけの縄張りの城を大日向だけで造ったとは思えない。

仁科氏の家臣を総動員して要塞化したのであろう。(対岸の飯森城が極端にプアなのは疑問だが・・)

飯田城(白馬村) (67)飯田城遠景

同迷軍としてお付き合い頂いたていぴす様には感謝でございますw

≪飯田城≫ (いいだじょう月夜沢城 犬川城) 

標高:984m 比高240m
築城年代:不明
築城・居住者:大日向氏
場所:北安曇郡白馬村神城飯田
攻城日:2012年11月3日 
見どころ:二重堀切、郭、土塁など
お勧め度:★★★★★(満点)
城跡までの所要時間:直登で30分
注意:地図・地形図・コンパスは必携。一人での訪問は避けるべし。
付近の見どころ:冒頭の記事を参照
参考文献:「図解山城探訪 第六集 安曇史料編 宮坂武男著」












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Posted on 2012/11/11 Sun. 10:46 [edit]

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コメント

こんばんは、おつかれさまです。

昔、小生がこの付近に訪問した際、なぜこんなに城砦が集中しているのか、少し疑問に思ったものです。

しなしながら、飯田城は、らんまる様の踏査からも、この地域の中心的な山城だったのでしょう。

わたしは登る気になれませんでしたが…。

白馬と言えば関東人にとっては「避暑地」「スキー」。
こんな素晴らしく濃厚な城がゴロゴロしている場所などと、ほとんどの人は知るよしもないでしょうね。

大垂水 #- | URL | 2012/11/11 21:40 * edit *

Re:大垂水様へ

コメントありがとうございます。

のほほんとした仁科氏統治時代が戦国時代の風雲急を告げられて慌てたんでしょうね。
北には長尾景虎、南からは武田軍の足音が聞こえたのでしょう。
城や砦をいくら作っても守るべき優秀な将校と動員兵力の欠如は補えなかったと思います。

屏風のような北アルプスの壁は現代人にとっては魅力的な風景ですよね。
その屏風ゆえにここで暮らす人たちは外の世界など無縁だっと思われます。

らんまる #- | URL | 2012/11/12 07:07 * edit *

直登はねえ・・・

やはり攻撃は古来より尾根伝いでしょう。
直登での攻撃は旧日本軍、無謀の極み。
精神力じゃ・・・・と、言いながら自分もやっているけど。

雪深いこの地で400年以上も風雪に耐えよく残ってくれたものです。
遠景が形状が良く分かりますね。

あおれんじゃあ #- | URL | 2012/11/12 20:03 * edit *

Re:あおれんじゃあ様へ

無謀な攻城戦で危うく信玄公の「砥石崩れ」ならぬ「飯田崩れ」になりそうでした・・(汗)
「らんまる殿、援軍のていぴす殿と共に白馬にて討死かと・・」洒落にもなりませんわ・・(笑)

それにしても見事な遺構の数々でございました。
人を寄せ付けない場所にあるというのも幸いしたのでしょうね。
後世に畑となってしまった山城に比べたら果報者でございます。

よほどの変わり者が攻めてこない限り、白馬の地でその素晴らしき遺構と共に眠り続けて欲しいものです。


らんまる #- | URL | 2012/11/12 21:54 * edit *

雪が・・・・

もう雪が降ったみたいですので
白馬レポの続き期待していたのですが
来年になりそうですねえ

丸馬出 #- | URL | 2012/11/15 07:43 * edit *

Re:丸馬出様へ

冬将軍の威嚇は今週末まで続きそうですね(笑)

多少ネタの在庫はあるので、ボチボチアップします。
年内には再チャレンジで小谷村に攻め入る予定でおりますが・・(汗)

らんまる #- | URL | 2012/11/15 19:15 * edit *
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