らんまる攻城戦記~兵どもが夢の跡~

「戦国の城」それは近世の城郭のような石垣も天守も無く、土塁と空堀というただの土で作られた戦場の砦。 戦国の世を駆け抜けた貴重な資料の宝庫です。

0406

八幡城 (下伊那郡阿南町西条)  

◆下条氏の領土に突如打ち込まれた進撃の楔(くさび)◆

昨日は4年ぶりに葛山城(長野市)を再訪し、四時間半も籠城して隅から隅まで調べてスッキリした!(笑)

旭山城と並び甲越合戦における争奪戦の舞台としてメジャー級の城なのだが、小生のブログは何故か未掲載・・(汗)

あ、思い出した、旭山城も未掲載だ!エヘン!(爆) ま、そのうち地元ならではの視点での掲載ということで・・。

今回ご消化い(気持ちは分かる・・・笑)ご紹介するのは、関氏の下条領への進撃の砦と伝わる八幡城(はちまんじょう)

八幡城(阿南町) (45)
早稲田より林道木曾畑線を登る。大下条地区の早稲田配水池の脇からテキトーに這い上がろう。

【立地】

大下条区の早稲田の西方で、井戸沢の右岸にあたり、風越木平(ふこぎだいら)の北方の標高740mの山頂にある。
最近まで林道脇に城跡の標柱があったようだが、朽ち果てたらしく見当たらなかった。

八幡城見取図①
単郭に堀切を穿った簡単な縄張で急ごしらえなのが縄張図からも見て取れる。

【城主・城歴】

関氏の物見城という伝承がある。大永五年(1525)、関氏の四代目の安芸守春仲は本拠地新野を出て峻険の見名峠を越し、下条時氏と早稲田にて戦いこれを破る。
この戦の前後に関氏が突貫工事で築城して下条領侵略の足がかりとし、下条氏に勝利した同年の八月に井戸沢の対岸に矢草城を築城し移る。その後、関一族の金田氏が城を預かったという。

八幡城(阿南町) (2)
思わず通り過ぎて気がついた堀切㋓。

八幡城(阿南町) (7)
堀切㋒の堀底を踏査する「ていぴす」さん。北側より撮影。急な傾斜を利用しているのが分かる。

八幡城(阿南町) (10)
この城の見どころは主郭背後の堀切㋑。主郭側の堀を石積みにしている。関一族の城の変な(?)特徴の一つだ。

この城を関春仲より預かった金田一族については「定本伊那の城」(1996年3月 郷土出版社)の猪切智義氏の掲載文を引用させていただく。

「この城に勤めたのが、関氏一族の金田氏(かなだし)である。金田家に伝わる貞享二年(1685)金田春盛の記述によると、先祖は豊後国(大分県)国東郡金田庄から出、初代領主は新野、関盛春の二子で兄伊勢守盛岡の弟が金田を名乗り金田伊賀守盛数を初代として続く家である。

八幡城(阿南町) (11)
土留めと思われる石積みの跡。北側の堀㋐にも見られる。短期間での工事における土砂崩落を防ぐ目的か?


関氏が早稲田に進出した折に、早稲田村の一部を割いて井戸村を解説し、そこに本拠を置いて八幡城を管理していたのである。関氏が矢草城を去った後は上総守盛形がその後を守り、その子飛騨守春守-佐左衛門春年と続く。弟次右衛門盛春は和知野村に帰農している。

金田家は関氏滅亡後も、已む無く下条方に従い、下条氏滅亡後は井戸村に帰農し、代々続いて今日に至っている。同家の墓地に自然石の墓碑に上総・飛騨と読める文字が残っている。阿南町に金田姓の多いのは、この系統に繋がる家が多いのである。」(引用終わり)

八幡城(阿南町) (17)
主郭南側。藪で酷いのもあるが削平が甘く大雑把な作り。

八幡城(阿南町) (22)
主郭東側の切岸。急造された感じが残る雑さ。

八幡城(阿南町) (23)
主郭の北側。ここは一生懸命削平した跡が残る(笑)


【関氏の下条領への侵攻に伴う築城と最期】

伊那の小豪族の興隆と領土争い、そしてその終焉に至る経緯などは興味が無い方も多いかもしれない。
でも誰かが伝えていかないと、南信濃の最果てで存在していた関一族は忘れられてしまうような気がしてならない。

まあね、領民を酷使し城の新築移転を繰り返したが為に最期は自業自得のような幕切れとなった関一族だけど、下条さんも領民に嫌われてたから、どっちもどっちだと思うが。

八幡城2(長野市)
関一族の興亡史。こんな図を作成したのは小生ぐらいであろう(笑)※上田城の築城は天文三年とも。


【城跡】

主郭は52×11の短冊形で前後に堀切㋐と㋑を入れている。堀切㋑には石積みが施され、堀底にも崩れたと思われる石が散乱している。山麓から運び入れたように思える。
主郭の北側には数段の帯郭が見受けられ、防御構築が為されているので防御指向は「北」で下条氏からの攻撃を意識しているのが分かる。(大手筋もこの方面だったのだろう)

八幡城(阿南町) (25)
北側から見た主郭。短冊形に湾曲している。

八幡城(阿南町) (24)
主郭北側から見下ろした堀切㋐。急斜面に堀割りを造成する技術が未熟なのか中途半端な感じを受ける。

八幡城(阿南町) (32)
東側の堀底から撮影した堀切㋐。横堀というよりは段郭のように見える。

関氏が下条領の早稲田のこの場所にゲリラ的なアジトを確保し、北への橋頭保(陣城?)にしようとした事が分かる。

残念ながら現在の城跡からは雑木林が邪魔して景色が良くないが、往時は北に広がる大下条区が一望に見え物見には適した場所だった事が理解出来る。

八幡城(阿南町) (37)
北斜面の段郭周辺にも石積みの跡が見られる。

山間地の痩せた耕作地が多く畑作中心で収穫物も少なかった新野周辺に比べ、古代より稲作に恵まれた和知野川以北の村は、関氏にしてみれば喉から手が出るほど魅力的な土地だったのである。

この時の下条家の当主時氏は、隣接する松尾小笠原家との因縁の対決に兵を割かれてしまい、大永五年の関氏との戦いには充分な兵力で臨む事が出来ずにまさかの敗退を喫して、大下条一帯を取られてしまった。


この続きは次回の「十年住んだら飽きてしまった矢草城」で・・・(笑)

八幡城(阿南町) (39)
北の斜面から見た主郭方面。砦の立地としては及第点だ。

八幡城(阿南町) (47)
登り口手前の林道から下条区を撮影。八幡城からはこんな景色が見えていたはず。


≪八幡城≫ (はちまんじょう)

標高:758m 比高:185m(旧道より)※林道の登り口からは80m程度
築城年代:不明
築城・居住者:関氏
場所:下伊那郡阿南町大下条西条
攻城日:2014年3月23日 
お勧め度:★★☆☆☆
城跡までの所要時間:20分 駐車場:林道脇へ路駐。
見どころ:石積みの堀切
注意事項:夏は藪が多そう
参考文献:「信濃の山城と館⑥諏訪・下伊那編 宮坂武男著」「定本 伊那の城」
付近の城址:矢草城、上田城、砦山城など
Special Thanks to ていぴす殿

八幡城(阿南町) (48)
対岸の上田城から見た八幡城。
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Posted on 2014/04/06 Sun. 12:36 [edit]

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コメント

しんぷる!

こげな単純構造の直線連郭尾根城、好きですねえ。
縄張図も鳥瞰図も苦労しないしねえ。
この山合いの集落、のどかですねえ。
どうやって生活をしているんだろうねえ。
こんな所にも苛烈な戦国の荒波が押し寄せたんだねえ。
この辺の土豪じゃ、兵力は100名いたらまともな方でしょうかね。

あおれんじゃあ #- | URL | 2014/04/06 23:48 * edit *

Re: あおれんじゃあ様へ

大至急作ってみました!って感じの掻き上げの砦でございます。
堀を石積みで補強する技術も旅人から仕入れたのでしょうか?不思議です。

兵隊もそこらの集落の若い衆をかき集めたんでしょうね。チョッとした愚連隊みたいなもんでしょう(笑)
ゴミのような砦と辺境の地のヤクザの抗争を調べにわざわざ片道250kmを出掛けて行くとは重病且つ危篤状態でしょうか・・・(汗)

らんまる #- | URL | 2014/04/07 07:30 * edit *

はじめまして。
らんまる様は普段からとても鍛えていらっしゃるのですね。すごいなあ。
豊富な画像とご説明で、山城の勉強をさせていただきます。
私にはまだ、ただのもこもこにしか見えなくて。
初心者コメントで失礼致しました。

つねまる #- | URL | 2014/04/09 21:13 * edit *

Re: つねまる様へ

コメントありがとうございます。
ドラえもんの所有している「どこでもドア」が欲しいのですが、無いものねだりなので、仕方なく何処でも登っております。いたずらに年齢を重ねてしまったので、重力に逆らって道無き藪を掻き分けるのもそろそろヤバイかなあーなどと勝手に限界を作っております(笑)

貴殿のブログも先日読み逃げさせていただきました。
今は亡き本家の叔父が、「尼子一族の末裔が吾ら一族なのだ」と申しておりましたが、STAP細胞同様に捏造された家系図であろうと思い、平家の落ち武者の如く毎日を過ごしております(汗)

所詮、土の軍事構築物はどう見ても土です(笑)
良かったらまた遊びにお越し下さいませ。

らんまる #- | URL | 2014/04/09 22:01 * edit *
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