らんまる攻城戦記~兵どもが夢の跡~

「戦国の城」それは近世の城郭のような石垣も天守も無く、土塁と空堀というただの土で作られた戦場の砦。 戦国の世を駆け抜けた貴重な資料の宝庫です。

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鬼女紅葉伝説③  

◆伝説を史実と錯覚させるほどの名作とその舞台裏◆

「紅葉狩伝説」は紆余曲折を経て、世間で云うところの「判官贔屓(ほうがんひいき)」の作風に落ち着いた。

源九郎判官義経は幼少期を鞍馬寺で過ごし、平家追討の兵を挙げた兄頼朝に従い、軍人としては超一流の戦術を駆使して平家を滅亡に追い込んだ希代の戦略家であり、軍師官兵衛など足元にも及ばない天才であった。

木曾義仲 020

が、残念な事に義経は軍事の天才であっても政治の世界では幼児以下(失礼・・)で、頼朝から奪還を命じられていた三種の神器は平家滅亡と共に海に沈んで行方不明になるし、頼朝に内緒で勝手に官位を授かって面会謝絶になるし・・・おバカ極まりないのである・・(汗)

冷静に考えれば自業自得の義経なのだが、「馬鹿な息子ほど可愛い」という同情と、幕府を作った兄の嫉妬で邪魔者扱いされ都落ちした悲運のイケメンに対する世間の支持率は安倍政権を凌駕したのである・・(笑)

判官贔屓の物語の王道は、下記条件を満たさないと土俵にすら乗れない。(まっ、当たり前の条件ではある)

「由緒正しき血統」(または家柄であること)

「都に住んでいた」(地元とか田舎出身ではダメ)

「故あって地方に流される」(謎の過去を秘めている)

「美男または美女」(ブサイクは救う価値も無い)

「とにかく強い」(卑怯技や裏技もアリ)

紅葉伝説201406 (124)
最近の傾向としては忠誠を誓えるアイドルであるかというのも重要だという・・。

紅葉伝説201406 (123)
「萌え~!!」という要素も必要な時代になった・・・(汗)

明治十九年に初版が刊行されたと云う「北向山霊験記(きたむきやまれいげんき)」は、当初は別所北向観音の御利益を宣伝する目的で書かれた伝記だが、判官贔屓の要素を取り入れ反中央政権を盛り込んだ様々な脚本が生まれている。

【北向山霊験記における鬼女紅葉の軍団編成】

●平将門の旧家臣
・鬼武五郎・熊武与惣様・鷲王要・伊賀瀬九郎様の四名とその家来
●鬼族
・おまん(女・年齢23か24歳。運搬能力は七十人力、人間への攻撃力は未知数)
※このお姉さん、紅葉軍が全滅後も生き残るのですが潔い最期を遂げる。感動ものです。
●紅葉
・ラスボス。火炎の術、水遁の術を操り、風も意のまま。攻撃系の妖術を得意とする。


【紅葉軍団の城館】

●鬼の洞窟(荒倉山)
・一般的に紹介されているのはここ。戸隠の荒倉山キャンプ場から徒歩20分。妖艶というよりはチョッと怖い雰囲気。
荒倉山のキャンプ場に車を置いて、「鬼女紅葉伝説を巡るコース」は往復約1時間。

①毒の平(ぶすのたいら) ※謡曲「紅葉狩」
・平維茂が紅葉の様子を探るために法衣をまとってここを通りかかると、美女が宴を催していました。維茂は美女に誘われてこれに列席しますが、すすめられた美酒を毒酒と見抜き、この美女こそが紅葉だとして戦います。

紅葉伝説201406 (61)
キャンプ場のある辺りが「毒の平(ぶすのたいら)」 ※容姿のブスとは意味が違います・・・汗

②釜背負岩(かましょいいわ)
・キャンプ場からの遊歩道が「釜岩林道」と交差するのを奥に進むと、「鬼の寝た 穴よ朝から 秋の暮」という俳人小林一茶の句碑があります。目的地は岩屋と呼ばれるその「穴」。

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実際には一茶が戸隠の宝光院で読んだ句だというが、この場所にこそふさわしい。

紅葉の暮らしぶりに想いを馳せながらしばらく歩いて行くのだが、赤い鳥居がチョッと怖い・・(汗)

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鳥居を潜り登って行くと右手に巨大な奇岩が「とうせんぼ」をします。
この岩は鬼が釜を背負った姿に見える事から「釜背負岩」と呼ばれ、鬼の荒々しさを連想させるというのだが、小生には蜂の巣を盗んできたクマのプーさんにしか見えなかった・・・(笑)

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釜背負岩(かましょいいわ)。鬼が通せんぼしているようでした。

③舞台岩(ぶたいいわ)

大きな一枚岩の上で、紅葉は朝な夕なに酒宴を開き、舞い踊ったと伝えられています。舞台岩の向こうに眼を馳せれば、屏風を開いたかのように折れ曲がった見事な岩山がまるで舞台の背景のように聳え、舞台岩と併せて一枚の絵のような美しさです。

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伝説では、この屏風岩の陰から鬼に変じた紅葉が出入りして、維茂の軍を悩ませたとも云われています。

④紅葉の化粧水(もみじのけしょうみず)
・紅葉はこの清水で朝夕に顔を洗い、化粧をしたと云われています。紅葉の美しさ、若々しさは、この水を使ったからだとか。

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二の木戸とはここであろうか?

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過激な欲望には「紅葉の化粧水」は対応致しかねます・・・(汗) ※個人差がありますのでご注意・・(笑)

⑤紅葉の岩屋(もみじのいわや)
・「鬼の岩屋」とも云われ、紅葉が隠れ住んだ岩穴です。切り立った崖に、二つの穴がぽっかりと開いています。小さな沢に架かった木橋をゆっくりと渡って穴に近づきます。

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向かって左側の小さな穴が、紅葉が根城とした穴だということです。深さは15mほどあって、中はひんやりとして暗く、もの悲しい雰囲気が漂っていました。右側は前庭と呼ばれる10m四方の穴で、こちらには陽が差し込み、謡曲「紅葉狩」の記念の木柱が立っています。

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奥から紅葉が手招きしているのが見えるだろうか?洞窟内には清水の湧く井戸があると云う。

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謡曲「紅葉狩」の記念柱が多数建つ「前庭」

いわゆる自然地形の天嶮を利用した要害だが、比高差と沢の崖を頼りとした立地で、人工的な工夫は見られない。
こんな鬱蒼とした山の中で何を頼りとしたのであろうか。疑問は尽きない。


●内裏屋敷跡(鬼無里)

前々回の記事で紹介した場所。裾花川の河岸段丘を利用した要害で、立地としても悪くない。

紅葉伝説201406 (182)
居館を要害化したとする「北向山霊験記」はこの場所を想定しているのであろうか?

●福平城(戸隠)

まあ、この場所は小生が強引に推薦している戦国時代の山城である。(溝口伯耆守の居城とも)
戸隠・鬼無里・小川にある山城の中では規模も大きく縄張りも技巧的である。

福平城見取図①
長大な横堀と竪堀は武田流であろうか。

福平城 (68)
福平城から見た戸隠集落。田舎を馬鹿にした平維茂を迎え撃つには素晴らしい縄張である。

まあ、山城としての解説を知りたい方は⇒福平城


【鬼女紅葉伝説に関連する神社・仏閣】

●柵神社(しがらみじんじゃ 戸隠)
・平維茂が紅葉の居場所を突き止める為に放った矢が落ちた場所に建つ神社。

紅葉伝説201406 (15)
手入れする人も絶えたらしい柵神社。とはいえ、荘厳な作りである。

●権現山 大昌寺(ごんげんやまだいしょうじ 戸隠)
・紅葉と維茂の位牌、紅葉狩の絵画の掛け軸がある。平成三年には紅葉慈母観音が建立されている。

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仁王像のある立派な山門。

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紅葉慈母観音。実はこの裏山が戦国時代の城跡なのだが、藪が酷く突入も出来ずに未調査のままである・・・(汗)

●紅葉稲荷社(戸隠 荒倉山キャンプ場)
・昭和六十一年の再建。久々に霊気を感じたら、やはり写真にもそれとなく写り込んでいるようだ・・(怖っ)

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●加茂神社(鬼無里)
・天武天皇が遷都の地を検分するために派遣した三野王(みぬのおう)が加茂大神宮の称を与えたと云い、また勅使の館を置いたので東京(ひがしきょう)といいます。東京組の産土神(うぶすがみ)で、武御雷明(たけみかづちのみこと)・健御名方命(たけみなかたのみこと)・天思兼命(あめのおもいかねのみこと)を祭神としています。

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拝殿は18世紀後期の建築様式とも云われる。

●春日神社(鬼無里)
・天武天皇が遷都の地を検分するために派遣した三野王(みぬのおう)が来村し、白鳳年間に創建した社と云われています。天児屋根命(あまのこやねのみこと)・健御名方命(たけみなかたのみこと)・八坂刀売命(やさかとめのみこと)を祭神として西京にあります。

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拝殿は明治二十四年の再建。

●常楽寺北向山観音
・本尊は千手千眼観音で、北斗星が暗夜の指針となるように、この、北向きのみ仏は、衆生を現世利益に導く霊験があり、南向きの善光寺と相対し、古来、両尊を参拝しなければ片詣りになると云われている。
天長二年(825)、常楽寺背後の山家激しく鳴動を続けた末、地裂け人畜に被害を与えたので、これを鎮めるため慈覚大師が大護摩を厳修すると、紫雲立ち込め金色の光と共に観世音菩薩像が現れた。
大師自らこの霊像を彫み、遷座供養したと伝えられている。
木曾義仲挙兵の際、焼失したが、源頼朝が再興し、その後北条義政及び代々の上田藩主寄り寺領の寄進があった。

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本堂。

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平維茂が霊験を授かったという北向観音。

【鬼女紅葉の墓】

鬼女紅葉の墓と伝わる場所は、戸隠の柵(しがらみ)地区にある「鬼の塚」と鬼無里の松厳寺の二箇所にある。

●鬼の塚
・紅葉の墓とその部下の墓がある。
近くには紅葉伝説の説明板が設置されている。

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紅葉の墓。

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部下の墓。

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鬼の塚の入口。

●松厳寺
・紅葉及びその部下の墓がある。紅葉の墓には戒名が記されている。

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松巌寺。

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部下(家臣)の墓

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戒名の刻まれた紅葉の墓。

さて、如何だったでしょうか?

史跡巡りをしている小生も、史実だったと誤解しそうな状況でした。

きっと紅葉の妖術にしてやられたのだと思います・・・(笑)

「記録よりも記憶に残りたい」

なるほど、そういうことだったんですね。

戸隠にお越しの際は、紅葉の事を想い出していただけると、嬉しい限りでございますw

紅葉伝説201406 (163)
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Posted on 2014/06/18 Wed. 00:31 [edit]

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コメント

面白かったですわ

タイトルのとおりだす。
あの辺は何度か通ったことあるだけ、ストーリーが良く理解できます。
史実があっての伝説ですが、あの山に囲まれた里で果たした昔、何があったのか?
想像しただけで楽しいですなあ。
それを妄想と言いますが。

やはり紅葉さんは、山村紅葉さんじゃダメです。
北川景子がいいです。

うちのかあちゃんも怒ると鬼になります。
目がつり上がり、頭に収納されていた角がアンテナのように伸び、歯が延びて牙になり・・・こわくて、おもらしをします。
って、どこの家も同じかい?

あおれんじゃあ #- | URL | 2014/06/19 21:57 * edit *

Re: あおれんじゃあ様へ

最近はタイトルを逸脱して幻魔大戦の取材って感じですね・・(笑)

伝説は口伝なので、語り部の思い入れでどんどんストーリーが変化していくのでしょうね。
それでも紅葉が勝利するストーリーにはなれずに「判官贔屓」の物悲しい結末が郷愁を誘うようです。

世の中の女性、鬼と云うよりは妖怪だと思います。
「か弱き者、汝の名は お と こ」(爆)

らんまる #- | URL | 2014/06/20 06:55 * edit *
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