らんまる攻城戦記~兵どもが夢の跡~

「戦国の城」それは近世の城郭のような石垣も天守も無く、土塁と空堀というただの土で作られた戦場の砦。 戦国の世を駆け抜けた貴重な資料の宝庫です。

0907

松田館(千曲市八幡 長野県宝指定)焼失の衝撃・・・  

◆未来に語り継ぐべき貴重な遺構が人災により焼失◆

朝起きて、何となくtwitterをチェックしていたら、平山優先生の「衝撃的なニュースが!長野県千曲市八幡にある歴史的な神主屋敷「松田館」(長野県宝)が焼失。・・・・・・・後略」

「???」 まさか、冗談でしょ・・・。

ネットの動画ニュースで、紅蓮の炎に包まれ焼け落ちる「松田館」を見て、茫然自失。 なんてこった・・・(涙)

全国版のテレビでも取り上げられていた。信じたくないが、事実であった。

松田館 (44)
今年3月の見学会で公開されたときの母屋。今回の火事で跡形もなく焼け落ちてしまった。

来年には修復工事が終わり、一般公開予定だったという。

小生は、今年の三月に一部公開の時に見学させていただいたが、結局、その時が最後の見納めになってしまった・・・。

詳細は⇒「松田館2」を参照ください。

9月6日午後7時頃に出火し、約3時間半後に消し止められたが、県宝の主屋と斎館など四棟を焼失。出火原因は警察と消防で調査中だが、出火当時、ハチの巣の駆除を千曲市より委託された男性が敷地内で火を使って除去作業をしていたという。

松田館 (11)
永遠に見ることが出来なくなった儀式のための湯殿。(主屋)

自然災害による倒壊ならば、仕方がないと諦めもつくだろうが、完全な人災である。未然に防げた事故である。

ご覧の通り、主屋はほぼ全面が茅葺(かやぶき)の屋根。火を付けたらどうなるかなんて、子供でも分かりそうなものである。

千曲市の管理監督もお粗末で、税金を5億円近く投入した史跡整備事業だということが全く周知徹底されていない。

所詮は他人事。この御屋敷の価値を認識していた方が果たして何人いたのか?消火栓、スプリンクラー、放水銃など、最悪の事態を想定した防災設備があれば、延焼は喰い止められたかもしれない。今となっては後の祭りである。

【火災後の松田館】

いても立ってもいられず、昼休みに現地へ飛んでみた。

松田館 (87)
在りし日の松田館(今年3月撮影)

IMG_2638.jpg
焼け跡の遠望。新調された土塀の向こうにあるはずの主屋も斎館も見えなかった。

木材の焼け爛れた臭いが、道路を隔てた武水分神社まで拡散して、炎の激しさを物語っている。

警察・消防の現場検証が続き、冠木門・長屋門は固く閉ざされキープアウトテープでシャットアウト。報道陣も何社か門の前で待機している。

僅かに開いた冠木門(松田邸正門)から、ワンチャンスで撮影を試みた。

IMG_2628.jpg

IMG_2632.jpg
正門の正面の斎館。ああ、なんという姿に・・。

IMG_2633.jpg
商売柄、お巡りさんとか消防士さんとかは平気なのですが、さすがに緊張してパチリ。

残念ながら、主屋は敷地内に張れないので撮影出来ず。なんかねえ、無性に悲しかった。

IMG_2634.jpg
神主の松田さん宅は斎館の隣でしたが、辛うじて延焼の難を逃れたようです。ホッとしました。

IMG_2623.jpg
長屋門の奥に主屋の焼け爛れた残骸が見える。あの雄姿をもう見る事は出来ないのだ。

IMG_2635.jpg
主屋の茅葺屋根の燃え残りの拡大。二百年以上風雪や雷、戦災にも耐えてきたのに、一瞬で消え去るとは。

IMG_2637.jpg
辛うじて骨格と屋根が燃え残った斎館(南側道路より撮影)

●今回焼失した主な建物

 名称:長野県宝「松田家住宅主屋」(まつだけじゅうたくおもや)

 指定:平成16年11月22日
 概要:主屋の建築年代は不明だが、建築部材の仕上げや建物の特徴から18世紀代の建築と推定される。
     19世紀前期に現在のように改造されたものと考えられる

 建物の特徴として、間口十二間語釈、奥行四間の細長い木造平屋建、茅葺(かやぶき)の建物で、間口中央から斎館に向かって 凸字形に突き出した平面形となっている。
 主屋の平面は、前後に五室が並ぶ形式で、土間が表から裏まで通る一般の民家とは異なった間取りとなっている。天井が低く、  差鴨居(さしがもい)や長押(なげし)を用いない武家住宅のような趣がある。

 名称:松長野県宝「田家斎館」(まつだけさいかん)

 指定:平成26年2月28日
 概要:文久元年(1861)に再建された間口7間、奥行3間半の寄棟造の建物で、神殿が設けられた儀礼を主に行った。
    現在も9月14日の仲秋祭や大頭祭の頭殿さんの出達儀式の場として使われている。

松田館 (6)
もう見る事の出来ない主屋の屋根。

私たちは、先代の人々が命懸けで守り続け、未来の子供たちに引き継ぐべく貴重な遺構を、あり得ない凡ミスで灰にしてしまった。

悔やんでも悔やみきれない痛恨のエラーである。

同じ不幸を繰り返さない為にも、今一度皆が全力で文化財を守り抜く誓いを立てたいと思う。



スポンサーサイト

Posted on 2017/09/07 Thu. 22:15 [edit]

CM: 6
TB: 0

« 苗木城 ①(岐阜県中津川市苗木)  |  小里城山城 (小里城 岐阜県瑞浪市稲津町) »

コメント

こんばんは

私もニュースを何気なく見ていて、あれ?これはらんまるさまの所で読んだ館では??
驚いて、過去記事を見に行ってしまいました。
本当に大変なことになってしまいましたね。
蜂の巣の撤去をした方も、正式な業者ではなかったとも聞きました。
見に行くこともならないまま、消失してしまった松田館。
残念です。

万見仙千代 #YR4Ixzf2 | URL | 2017/09/08 19:36 * edit *

Re: 万見仙千代様へ

まさか悪い夢でも見ているのかと思いましたが、事実と知って茫然自失でした・・・・。

恐らく復元も無理でしょう。整備事業としてつぎ込んだ10年の歳月と投入した4億円の税金も灰燼となりました。

松田神官が代々守ってきた貴重な遺構は、ハチの巣とともにこの世から消えました。

未来に引き継ぐことの出来なかった悔しさ。千曲市はリスク管理について根本から見直す体制が必要だと思います。

らんまる #- | URL | 2017/09/08 22:19 * edit *

供養

ニュースで見て驚きました。
ここまで整備したのにちょっとした過失で貴重な文化財が失われてしまい残念です。
小生は周囲しか見ていませんが、内部を見て、写真記録された貴殿はラッキーでもありましたね。遺影に合掌です。

あおれんじゃあ #- | URL | 2017/09/09 07:47 * edit *

Re: あおれんじゃあ様へ

ヒューマンエラーは必ず起こり得るとしても、殺虫剤が火の粉を吸ったら火炎放射器になるという知識はなかったのでしょうか。
今ではあまり見る事の無いむき出しの茅葺屋根に火が付いたら、その消火は困難が伴う事も・・・。

出火原因が雷様なら諦めますが、悔やみきれない人災です。
今年3月の一週間だけの部分公開のときは、虫の知らせだったんでしょうか。八幡様のお告げだったのかもしれませんネ。
もう見られないと思うと悲しい現実がそこにあります。

らんまる #- | URL | 2017/09/09 10:55 * edit *

残念です・・。

記事を読ませていただいてはじめて知りました。
大変ショックな災難です。人災とはいえ、やはり消化設備を先に取り付けなかったのは悔やんでも悔やみきれません。
今後加速度的に進んでいくであろう、中世城館等の復元計画には同じ過ちを繰り返さないようにしていただくしかありません。そうしないと本当に今回の痛ましい事件が無になってしまいます。

ところで本当に余計なことですが、その業者さん?、責任押し付けられていないでしょうか?きっと自身を責め、言いようもない後悔をしてみえると思うんです。
「皆が全力で文化財を守り抜く」ことが大切なことですので、賠償面は当然ですがともかく、市や行政にも責任はあるのですからフォローしていただきたい、と願うばかりです。
逆撫でするようなこと言って申し訳ありません。

久太郎 #- | URL | 2017/09/20 22:44 * edit *

Re: 久太郎様へ

地元ながら、長野県の文化財保護に対する取り組みは残念ながら低くて、毎年どこかしらで文化財の破壊や滅失事故が起こり、そのたびに心を痛めております。

昨晩、此のニュースのその後について記事があり「千曲市の岡田市長は、焼失した松田館の再建について焼け跡の史料を捜索しつつ、国や県と協議しながら前向きに取り組む」というような内容でした。やはり史料も一部は焼失したのか・・・

千曲市として市民の税金を投入して保存整備事業を進めていたのだから管理監督責任は行政にあるのですが、千曲市の市民に対しての正式な謝罪も無ければ、他人事のような発言に呆れてしまいます。再建するのは結構ですが、また税金を黙って投入するんでしょうか。貴殿の心配される通り、ハチの巣駆除の業者に賠償を求めるような気もしますが、裁判になれば行政側の防火管理体制における過失を問われるのは当たり前の話になるので、そこまで踏み込むのか不透明ですね。

「戸締り用心、火の用心」 当たり前の事を継続して四百年守られてきた文化財が、掟破りで灰になる。残念です(涙)

らんまる #- | URL | 2017/09/21 08:15 * edit *
コメントの投稿
Secret

トラックバック
トラックバックURL
→http://ranmaru99.blog83.fc2.com/tb.php/890-0158a787
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

城主からのご挨拶

地域別攻城戦記

諸国在住の皆さまのありがたき進言

もののふ入城者数

在城中の「もののふ」

攻城戦記年表

▲Page top